2019-01-01から1年間の記事一覧

【紀行雑記7-2 Frankfurt Central】

フランクフルト中央駅には改札がない。どころかヨーロッパの駅には基本的に改札がない。したがって街から駅を切り取るものがシステムの上で存在しない。その代わりに時々車掌が回ってきて検札する。我々が旅行者だと分かると、彼らは決まって最後に"良い旅を…

【紀行雑記6-1 無意味である意味】

瀬戸内海の離れ小島。風のない浜辺に穏やかな波が打ち寄せている。時折小さな魚が飛び跳ねてはポチャリ、と波間に水の輪を作る。輪は次第に広がり消えていく。 周囲をぐるりと囲む島の主要道路はぐねぐねと蛇行しながらその海抜を上下させる。港から少し進む…

【雑感 酒と煙草、もしくは◯◯について】

葉巻を吸ったことがあるだろうか?そうそう、今思い浮かべた、あのキューバの軍人が吸ってそうなぶっといヤツである。 私は普段はタバコをやらないのだけど、東京やなんかに行くと悪い先輩がいて、私に心地よい苦味と甘美な背徳感をクルっと巻き込んだ、その…

【紀行雑記5-1 砂曇りのカンバス】

飛行機はゆっくりと高度を落としていく。時折の微動を繰り返しながら、厚く重たい雲の中を突き進んでいく。窓に切り取られた視界は一面汚い磨りガラスで我々がどのくらい地面に近づいたか全くわからない。それでも、宙に浮く鉄の塊は確実にその体を落として…

【紀行雑記4-1 埋もれる】

今更東京を舞台に語られることなどもう何もないかもしれない。この街を歩いて、昔誰かが見つけた感情の断片を拾ってはまるでそれを初めて見つけた冒険者のような顔をしているが、やはりそれは既に誰かが語った何かであって、もうそこに新しさというのはない…

【雑感 食い意地の分析哲学】

ーーーおよそ像が写像されるものの像となりうるためには、像と写像されるもののうちに、何か同一のものが存在しなければならないーーー(『論理哲学論考』) 誰かと食堂に入って、私はうどんを頼んだのに、向かいに座る人がカレーを頼んだら急にカレーが食べた…

【仮説 我々はあと何分で幸せになれるか】

私が自己存在について最も深く考察するは、決まって金曜日の朝である。私を私たらしめる要素について、もしくは私の中にある私ではない要素について、思索を巡らせる。厭世的に、或いは楽観的に。 ふぅ、まったく、どうしてこうも毎週お腹が痛くなるんだろう…

【雑感 いちごジャムと距離空間】

(訳あってvol.2になりました。これまでの記事は、http://tsurezurenaruzatsubun.hatenablog.comにあります) ーーーある集合に"構造"が存在する時、我々はそれらを"空間"と呼び、またその"構造"が"ある条件"を満たしていれば、その空間には"距離"が存在するー…